Column コラム

2025.01.16

遠隔医療とは?メリット・デメリットや日本での現状と課題などを解説

遠隔医療とは?メリット・デメリットや日本での現状と課題などを解説

さまざまな業界でIT化が進むなか、医療においても多くの面でITの活用が推進され、遠隔医療が浸透しつつあります。しかし、遠隔医療という言葉を聞いたことがあるものの、具体的な内容や利便性については理解していない方も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、遠隔医療の概念やメリット・デメリットなどについて解説します。日本における遠隔医療の現状や課題についても解説しますので、ぜひ最後までお読みください。

遠隔医療とは

遠隔医療とは

遠隔医療とは、インターネットなどの通信技術を活用することで、離れた場所同士をつないで実現する医療のことです。

スマートフォンやパソコン、タブレットなどのインターネット端末を利用して、オンラインでの診療や医療相談、画像やデータの送受信などが実施できます。遠隔医療を活用することで、医療業務上の地理的な制約がなくなり、患者や医療従事者にとって数多くのメリットが生まれるのです。

遠隔医療は大きく分けて2つの形態があります。一つは医療従事者と患者間のやり取りで、患者が医師の診察を受けるようなケースです。もう一つは医療従事者同士のやり取りで、看護師が医師から指示を受けたり、医師同士で診療の支援を求めたりするような場合です。

遠隔医療の目的

遠隔医療の主な目的は、少子化が進み、医療従事者が減少することが予想されるなかで、医療の質を維持できるようにすることです。また、医師の地域偏在が進むなかで、過疎地や離島などの医療を活性化させることも重要な目的の一つです。

遠隔医療の一つであるオンライン診療を利用すると、院内における感染症のリスクや患者の通院による負担を軽減できること、継続的な経過観察が容易になることなどのメリットがあります。特に、遠方に住む方や高齢の方、仕事などで通院する時間を確保しづらい方にとっては、受診のハードルが大きく減少するでしょう。

また、医療従事者同士の医療相談などにより、医療資源が乏しい地域でも専門医の知見を得られる機会をつくれます。これにより、地域間の医療格差が解消され、全国の医療従事者で一定の診療技術を提供しやすくなるでしょう。

遠隔医療の種類と具体例

遠隔医療の種類と具体例

遠隔医療には患者と医療従事者間、医療従事者同士のものを含め、主に以下のような種類があります。活用の具体例とあわせてご紹介します。

  • オンライン診療
  • 遠隔診療支援
  • 遠隔画像診断
  • 遠隔病理診断
  • 遠隔カンファレンス

オンライン診療

オンライン診療は、スマートフォンやタブレットなどのインターネット機器を使用して、患者が自宅などから医師の診察・医薬品の処方を受けられるシステムです。オンライン診察を提供するためには、医師が専門の研修を受け、適切に対応できるよう準備を整える必要があります。

オンライン診療は通院における患者の体力的・時間的負担を軽減できるメリットがありますが、画面越しの診療であるため、どうしても判断できる内容には制限があります。特に初診や重症度の高い疾患の診断には適していません。

そのため、花粉症や高血圧症など慢性疾患の経過観察や、軽度な咳や湿疹などに対する診療に向いています。

遠隔診療支援

遠隔診療支援は、過疎地などの医療資源が不足している地域で、都市部の医師から現地の医療従事者に対する支援が受けられるシステムです。遠隔診療支援により、地理的な制約を受けることなく、専門的な医療知識やスキルを共有することが可能になります。

遠隔診療支援の代表例として「遠隔救急医療支援」や「専門的診療支援」があります。遠隔救急医療支援は、脳卒中や急性の心疾患の発症、災害時などの緊急を要するときに活用されます。専門的診療支援は、皮膚科や周産期医療、眼科など、特定の診療科から専門的なアドバイスによる支援を指します。

遠隔画像診断

遠隔画像診断は、院内で撮影した医療画像の読影を、外部の病院や企業に依頼できる仕組みです。医療機関における放射線診断専門医や読影医の不足に対応する有効な手段として近年注目されています。

遠隔画像診断を活用することにより、地方や離島の医療機関でも高度な画像診断ができるようになり、診断の質が向上したり、業務を効率化できたりすることが期待できます。24時間体制で稼働している依頼先であれば、夜間や緊急時の対応も安心でしょう。

遠隔画像診断については以下の記事でも解説していますので、より詳しく知りたい方はぜひご覧ください。

遠隔病理診断

遠隔病理診断は、医療機関から遠隔地の病理医に細胞の顕微鏡画像などを送信し、病理診断を依頼できるサービスです。病理医が不在の医療機関でも、迅速で正確な病理診断が可能となります。希少がんなどの診断が難しい症例に対しても、専門家の意見を得やすくなるメリットがあります。

遠隔カンファレンス

遠隔カンファレンスは、さまざまな拠点にいる医療従事者同士で、オンライン会議を通じて事例検討などできるシステムです。地理的な制約を超えて多くの医療従事者が議論に参加できるようになります。患者の医療情報を共有するだけでなく、医療従事者の継続的な教育などにも役立つでしょう。

遠隔診療とオンライン診療の違い

「遠隔診療」と「オンライン診療」は、どちらも遠隔医療の一つとして分類されるもので似ている概念ですが、実施する目的には違いがあります。

遠隔診療は、主に離島やへき地で生活する人を対象としており、医師不足の対策や医療の活性化を目的としています。

一方、オンライン診療は遠方の患者に限らず、患者の通院にかかる手間や時間を削減することを目的としています。オンライン診療の対象は遠隔診療よりも広範囲であり、都市部の人が利用することも想定されているのです。

遠隔医療のメリット

遠隔医療のメリット

遠隔医療は医療の提供におけるさまざまなシーンで活用されていることがわかりました。ここからは、遠隔医療の主なメリットを4つご紹介します。

  • 遠隔地での利用が可能
  • 患者の通院負担の軽減
  • 診療効率の向上
  • 医療従事者間での情報共有が円滑化

それぞれ詳しく見ていきましょう。

遠隔地での利用が可能

遠隔医療の大きなメリットは、地理的な制約を超えて医療サービスを提供できることです。医療資源が少ない地域や過疎地・離島などでも、都市部の高度な医療と連携できるようになります。これにより地域間の医療格差の解消につながり、地域医療の課題解決にもつながるでしょう。

患者の通院負担の軽減

遠隔医療の1つであるオンライン診療は、患者が自宅や職場などにいながら医師の診療を受けられることがメリットです。通院にかかる時間や労力が削減されるほか、病院内での待機が不要になるため、感染症対策にもなります。足の不自由な方や育児中の方など、外出が困難な方でも医療にアクセスしやすくなります。

診療効率の向上

遠隔医療は医師やスタッフの業務効率向上にも役立ちます。オンライン診療では医師の限られた時間を有効活用して診療ができたり、電子処方箋では事務作業の効率化を図れたりするメリットがあります。また、遠隔画像診断では、読影を外部に依頼できることで、院内のリソースをより重要な業務に充てることが可能です。

医療従事者間での情報共有が円滑化

遠隔医療では、インターネットを介した診療支援やカンファレンスにより、迅速かつ円滑に医療従事者同士の情報共有ができます。正確な診断や治療方針の決定につながり、医療の質を向上させることにつながるでしょう。また、業務上で必要な情報の共有漏れも防ぎやすくなります。

遠隔医療のデメリット

遠隔医療のデメリット

このように、遠隔医療にはさまざまなメリットがありますが、以下のようなデメリットが存在するのも事実です。

  • 遠隔医療に対応できる医師が必要
  • 正確な判断が難しいケースがある
  • インターネット端末の操作が必要
  • 厳重な個人情報の管理が必要

それぞれ詳しく解説していきます。

遠隔医療に対応できる医師が必要

遠隔医療のオンライン診療をするためには、医師が厚生労働省指定の研修を受ける必要があります。2020年4月以降にオンライン診療を開始する医師は、この研修の受講が義務付けられています。

そのため、医療機関でオンライン診療を導入したい場合は、研修を受けた医師を確保しなければなりません。場合によっては、追加の人材育成や採用のコストまで検討する必要も出てくるでしょう。

正確な判断が難しいケースがある

オンライン診療では問診や視診に頼ることになり、触診などの物理的な検査ができません。そのため診察できるケースが限られています。
オンライン診療が向いているのは、花粉症や高血圧、睡眠時無呼吸症候群などの慢性疾患や、軽度の咳や発疹など病態が安定している症状です。腹痛や胸痛、喘息などの急性症状や、レントゲン撮影や聴診などが必要な場合は、対面診療と併用することもあります。

インターネット端末の操作が必要

遠隔医療では、インターネット端末の操作が不可欠です。患者側でも適切なインターネット端末を準備し、その操作に慣れている必要があります。不慣れな方にとっては、この点が障壁となる可能性があるでしょう。

そのほか、地域や過疎地での診療支援においても、通信環境が不安定な場合は情報の伝達に支障をきたす恐れがあります。

厳重な個人情報の管理が必要

遠隔医療では外部とデータのやり取りが発生するため、より厳重な個人情報管理が求められます。

特に遠隔画像診断や遠隔病理診断では、患者の個人情報や画像情報が含まれるため、高度なセキュリティ対策が必要です。患者情報の匿名化、最新のセキュリティソフトを導入するほか、院内での研修やルール決めなどを徹底して、データの取り扱いに十分注意する必要があります。

日本における遠隔医療の現状と課題

日本における遠隔医療の現状と課題

日本の遠隔医療は、患者と医療従事者間、医療従事者同士においてあらゆる場面で活用されています。特にオンライン診療では、患者の通院負担が軽減され、病気の早期発見や早期治療にもつながる可能性が高まっています。

また、医師の診療効率の向上や働き方改革も進みつつあり、医療資源が不足する地方では高齢者や障がい者からのニーズに応えられる新たな選択肢として期待されています。

しかし、遠隔医療にはいくつかの課題も存在します。通信環境や機器の品質がオンライン診療の結果に影響を与える可能性があるため、改善策の立案が必要です。また、個人情報保護のためにより安全な手段を確立したり、遠隔医療に対応できる医師を育成したりすることも重要な課題となっています。

高齢化の進行や医療費の増加に伴い、効率的な医療サービスの提供がますます求められるなか、遠隔医療は今後さらなる発展が見込まれます。特に2025年以降は団塊世代が75歳以上になり、医療ニーズの急増が予想されるため、遠隔医療の重要性はさらに高まることでしょう。

まとめ

遠隔医療の種類や活用例からメリットとデメリットについて解説

この記事では、遠隔医療の種類や活用例からメリットとデメリットのほか、日本における遠隔医療の現状と課題について解説しました。

遠隔医療は、インターネット技術を用いることで、地理的な制約なく質の高い医療を提供できる仕組みです。目的としては、オンライン診療などの「患者と医療従事者間のやり取り」と、遠隔診療支援や遠隔画像診断などの「医療従事者同士のやり取り」に分けられます。

遠隔医療を活用すると、患者の通院負担が軽減するほか、医師の診療効率の向上やスタッフ間での円滑な情報共有ができることなどのメリットがあります。一方で、遠隔医療に対応するためには、医師が研修を受けたり、患者がインターネット端末の操作をする必要があったりすることがデメリットとして挙げられます。

この他にも課題はありますが、今後は医療ニーズがさらに増し、遠隔医療の重要性がより高まることが予想されるでしょう。

イリモトメディカルでは、30名以上の放射線診断専門医や各科の専門医による遠隔画像診断サービスを提供しております。幅広い検査の読影に対応できますので、遠隔医療の導入をご検討中の方はお気軽にご相談ください。

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