Column コラム
2024.12.30
画像診断にはどんな種類がある?それぞれの特徴を解説

検診や病気・怪我の診断において医療機関が実施する画像検査には、超音波検査・X線検査・MRI検査などの種類があり、検査画像をもとに画像診断を実施します。検査画像を正確に読み解き、診療医や担当医に適切な情報を提供するためには、それぞれの特性を知っておく必要があるでしょう。
そこで本記事では画像診断とは何かを説明し、画像診断の主な種類とそれぞれの特徴を解説します。
画像診断とは

画像診断とは、画像検査によって撮影された画像をもとに、体内に異変がないかを読み取り診断することです。
画像診断は画像検査と一括りにされることが多いものの、画像検査は装置を使用する検査であり、画像診断は画像検査の後におこなわれる診断という点に違いがあります。
画像検査では、検査の種類に応じてX線やCT装置・MRI装置といった装置を使用し、病気や怪我の有無、病気の広がり方、治療の効果などを調べます。画像検査は切開・組織採取などの侵襲性が高い行為を伴わないため、患者様にかかる負担を抑えながら人体内部の検査をおこなうことが可能です。
画像検査で撮影された画像は通常、画像診断室(放射線診断室)で放射診断専門医などの読影医による画像診断に用いられます。画像を読み解いて、病気にかかわる所見を読影レポートにまとめ、診療医や健診の担当医に情報を提供することが画像診断の目的です。
診療医や担当医は、読影レポートを読んで治療方針を決定したり、患者様へ説明したりするため、画像診断を適切かつ正確におこなえるかどうかは、患者様の健康に大きくかかわるポイントです。
画像診断の主な種類と特徴

画像診断は、画像検査で撮影した画像をもとにおこなわれるため、画像診断の種類は画像検査の種類でもあります。
以下では代表的な画像検査の方法を5種類挙げて、それぞれの画像検査の原理・特徴や、各種類の画像診断では何を調べるのかを解説します。
画像診断の種類(1):超音波検査
超音波検査(エコー検査)とは、超音波を撮影部位に向かって照射し、反射された音波を分析することで体内を画像化する検査方法です。超音波の伝播を良くするために、検査用ゼリーを患者様の体表に塗布し、プローブ(探触子)という機器を体表に押し当てて検査をおこないます。
また、超音波による描出能を上げるために患者様に造影剤を投与することもあり、造影剤を用いた検査は「造影超音波検査」と呼ばれます。
超音波検査の主な撮影部位は胸部~腹部で、循環器系や消化器系、泌尿器系などにある病気の診断に使われています。他に甲状腺や乳腺、下肢動静脈などの検査にも使用可能です。超音波検査で検査できる対象疾患はさまざまな種類があるものの、代表的な疾患としては腫瘍・結石・炎症などが挙げられます。
超音波検査の画像診断では、濃淡で表示された画像をもとに臓器の形状や働きを調べたり、腫瘍・結石・血栓といった異常な物質がないかを確認したりします。
なお、超音波検査で使用するプローブは超音波診断装置に接続されていて、検査中は超音波診断装置のモニタ上に画像が表示されています。検査者が医師であれば、超音波検査をおこなったその場で画像診断をすることも可能です。
一方、検査者が看護師や臨床検査技師・診療放射線技師である場合はその場で診断することができず、読影医による画像診断をおこなう必要があります。
画像診断の種類(2):X線検査
X線検査(一般撮影検査・単純撮影検査)とは、放射線の1種であるX線を撮影部位に照射し、透過したX線を検出することで体内の画像化をする検査方法です。X線の透過しやすさは骨・臓器など身体の部位で違いがあり、透過後のX線強度の差によってフィルムに影の濃淡が現れる仕組みです。
X線検査においても、描出能の向上を目的として造影剤を患者様に投与することがあり、造影剤を使用するX線検査は「X線造影検査」と呼ばれます。
X線検査はほぼすべての部位に適用できる検査であり、どのような部位の撮影に使用するかは医療機関によって違いがあります。検査できる対象疾患の種類も多く、がんなどの腫瘍や結核・肺炎、循環器系の疾患、骨折や臓器の損傷も撮影可能です。特に法定健診などの定期健康診断では、呼吸器・循環器の診断のために胸部X線検査が実施されます。
また、乳房専用のX線撮影は「マンモグラフィ検査」と呼ばれ、専用のマンモグラフィ装置を用いて画像撮影をおこないます。
X線検査の画像診断では、撮影後のフィルムから撮影部位の状態を読み解きます。フィルムには、X線が透過しにくい骨は白、水が多い部分は白~灰色、空気が多い部分は黒く映し出されるため、各部位の状態を診断可能です。たとえば黒い部分が多い肺の内部に淡く白い影が映っている場合、疑いのある疾患を所見として読影レポートに記載します。
なお、X線検査の画像検査は診療放射線技師が担当します。診療放射線技師は診断することができないため、撮影後の画像診断は読影医が対応しなければなりません。
画像診断の種類(3):CT検査
CT検査(コンピューター断層撮影検査)とは、CT装置から出るX線を撮影部位に対して360度照射し、検出器で読み取って画像化をする検査方法です。
X線を使用するという点ではX線検査と共通しているものの、CT検査はX線検査と比較して下記のような違いがあります。
- X線を全方位から照射することで、人体の断面画像を撮影できる。
- X線検査よりも鮮明な画像を、同時に複数枚撮影できる。
- 撮影画像を組み合わせて立体画像の作成もできる。
- 撮影部位の断面図を数mm単位で撮影し、部位の詳細な診断ができる。
CT検査も造影剤を患者様に投与することで描出能を向上することができ、造影剤を使用する種類の検査は「造影CT検査」と呼ばれます。
CT検査の撮影部位はほぼ全身で、なかでも心臓・大動脈といった循環器系や胸部・腹部の病変に対して描出能が優れているのが特徴です。検査できる対象疾患の種類も多く、特に肺の病変や血管の石灰化などの診断に適しています。
また、CT検査は血液のがんをはじめ、全身のがんの診断にも適している検査です。鮮明な画像を撮影できるだけでなく、病変の具体的な位置も確認しやすいため、多くの種類のがん検診で用いられています。
CT検査の画像診断では、撮影した複数枚の画像を読み解き、対象部位に異常があるかどうかを調べます。影の濃淡で表現されることはX線検査と同じであるものの、CT検査は断面画像であるため、異常がある部位の具体的な位置や病変の広がり方を指摘しやすい点がメリットです。
CT検査も画像検査は診療放射線技師がおこない、画像診断は読影医が対応するという流れになっています。
画像診断の種類(4):MRI検査
MRI検査(磁気共鳴画像診断検査)とは、強力な磁気と電磁波を照射できるMRI装置を用いて、人体内部の画像化をする検査方法です。電磁波で体内の水素原子を共鳴させて、水素原子が放出する微弱な電磁波を画像に変換するという仕組みで検査画像を撮影します。
また、MRI装置を用いて血流だけを撮影するMRA(磁気共鳴画像撮影法)という検査方法があり、これは脳血管の病変や障害の有無を診断するときに有効な方法です。
MRI検査の特徴は、体内をあらゆる角度から撮影できて、かつ撮影したい組織を強調できる点です。CT検査のように人体の断面画像も撮影可能であり、一般的なCT検査よりも高い解像度の画像を取得できます。
また、MRI検査はそのままでも比較的明瞭な画像を撮影できますが、病変部分の区別やより詳細な検査をおこなうために造影剤を用いるケースがあります。造影剤を用いる種類の検査は「造影MRI検査」と呼ばれます。
MRI検査は全身の撮影に使用可能で、特に頭部や四肢、動きの少ない臓器の撮影に適しています。一方で、心臓や腹部にある臓器など動きが大きい部位は撮影が難しく、MRI検査よりもCT検査のほうが向いているとされています。肺についても、MRIは空気の描出ができないため、CT検査のほうが向いている部位です。
MRI検査の画像診断では、撮影した画像をもとに病変や異常の有無を確認します。適切な方法で撮影された画像は組織のコントラストが強く、病変などを発見しやすい点がメリットです。
MRI検査をおこなうのは臨床検査技師や診療放射線技師であり、画像診断は読影医が対応する点は他の検査と同様です。
画像診断の種類(5):核医学検査
核医学検査(RI検査)とは、ある種類の放射性同位元素を含む放射性医薬品を患者様に投与し、放射線を検出・画像化して体内の撮影をおこなう検査方法です。
核医学検査で用いる放射性医薬品は、特定の組織・臓器に集積する性質を持っています。放射線の分布を画像にすることで組織・臓器の機能や代謝、腫瘍の広がりなどを調べられるのです。
なお、使用する放射性医薬品は微量であり、放射能の減衰や身体からの自然な排泄作用によって、効果は数時間~数日程度でなくなります。
核医学検査の特徴は、臓器の形態的な変化が起こる前に現れやすい、機能や代謝状態の異常を画像として撮影できることです。臓器の機能や代謝状態といった情報は、CT検査やMRI検査では得にくく、核医学検査をおこなうことで病気の早期発見につながります。
なお、核医学検査は放射性同位元素の種類により、PET検査とSPECT検査の2つに大別できます。
PET検査で使用する放射性同位元素は、2方向の放射線を同時に、それぞれ反対の方向に放出するものです。PET検査の主な種類としては、がんなどの診断のためにおこなわれる「FDG-PET検査」があります。
もう1つのSPECT検査は、放射線を1方向に放出する放射性同位元素を使用する検査です。SPECT検査の種類としては、骨の状態を調べる「骨シンチグラフィ」や、脳の血流を調べる「脳血流シンチグラフィ」が代表的です。
核医学検査は、PET検査・SPECT検査ともに全身範囲での撮影が可能であり、また特定部位の断面画像も撮影できます。診断に用いられている疾患は、がんや心疾患、脳血管障害・てんかん・認知症といった脳の病気です。
核医学検査の画像診断では、撮影した画像から放射性医薬品が集積している部位を調べます。たとえばFDG-PET検査であれば、がん病巣に放射性医薬品に含まれるブドウ糖が集積される性質があるため、画像上で濃く表示される部分にがんの疑いがあると診断する流れです。
核医学検査も、画像検査を診療放射線技師が担当し、画像診断は読影医がおこないます。
さまざまな種類の画像診断を依頼できる遠隔画像診断サービス

上記で紹介した画像検査・画像診断は、さまざまな病気の診療や検診に用いられており、医療機関では画像診断時における読影・読影レポート作成の負担が発生します。導入している検査の種類が多い医療機関では、画像診断による負担が大きくなりすぎているケースもあるでしょう。
特にCT検査・MRI検査・核医学検査では撮影する画像の枚数が多く、画像診断における読影枚数も増えるため、読影医にかかる時間が長くなる傾向にあります。読影件数の増加は、画像1枚あたりにかけられる読影時間の圧縮につながり、診断の質を維持することが困難になってしまいます。
画像診断の負担が大きいと感じている医療機関の方は、遠隔画像診断サービスの利用を検討してはいかがでしょうか。遠隔画像診断サービスとは、画像検査によって撮影した画像をオンライン経由で外部の企業・病院に送ることで、画像診断を委託できるサービスです。
遠隔画像診断サービスを提供する企業・病院では、在籍する放射線診断科専門医によって検査画像の読影をおこなった後に、作成した読影レポートを医療機関側に返送します。医療機関は読影レポートをもとに、治療方針の決定や患者様への情報提供などをおこなうことが可能です。
遠隔画像診断サービスを利用する際は、自院が実施している画像検査の領域に対応可能であり、かつ高精度の読影をおこなえる読影事業者を選ぶことが大切です。
遠隔画像診断サービスの選び方を詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
>>遠隔読影とは?選ぶ上での注意点・料金など分かりやすく解説
>>遠隔読影の比較基準とは?サービス内容・注意点など解説
まとめ

画像診断とは、画像検査で撮影した画像を読影医が読み解き、所見を読影レポートにまとめることです。
画像検査は超音波検査・X線検査・CT検査・MRI検査・核医学検査などの種類があり、検査の種類によって画像診断で調べるべき内容も変わります。画像診断の質は患者様の健康や治療方針を左右する要素となるため、精度を維持することが重要です。
画像診断は自院でおこなうだけでなく、遠隔画像診断サービスを利用して外部の企業や病院に委託する方法もあります。精度の高い遠隔画像診断サービスをお探しの方は、放射線診断専門医や各科の専門医が在籍するイリモトメディカルにお問い合わせください。