Column コラム

2025.02.13

医療ICTとは?導入のメリット・デメリットや活用例について解説

医療ICTとは?導入のメリット・デメリットや活用例について解説

情報通信技術を意味するICTはさまざまな事業領域で導入されていて、業務効率化やデータの利活用に役立っています。医療機関においても、医療ICTをすでに導入していたり、「自院も医療ICTを導入しよう」と考えていたりするケースが多いでしょう。

医療ICTの導入を進めるには、そもそも医療ICTとは何かを理解し、導入のメリット・デメリットも知っておくことが大切です。そこでこの記事では、医療ICTに興味がある経営者やシステム担当者の方に向けて、医療ICTの概要とメリット・デメリット、活用例を解説します。

医療ICTとは

医療ICTとは

医療ICTとは、医療分野において利活用されるICTのことです。医療ICTの具体例としては電子カルテを通じたデータの集積・共有や、インターネット通信を用いた遠隔診療の実現などが挙げられます。

ICTは「Information and Communications Technology」の略で、日本語では「情報通信技術」と訳される用語です。デジタル技術を活用してデータをやり取りし、情報や知識を共有することを指します。

なお、ICTと混同されやすいテクノロジー関連の用語には「IT」や「DX」があります。

ITとは「Information Technology」の略で、「情報技術」のことです。ITは技術そのものを指していて、ITの導入と言うとコンピューターやアプリケーションなどの情報技術を使用することを意味します。

対してICTは用語中にCommunications(通信)が入っているように、通信による情報の共有を重視している点が特徴です。IT(情報技術)を導入し、組織内におけるデータの利活用を図ることがICTの目的といえます。

もう1つのDXは「Digital Transformation(X-formation)」の略で、デジタル技術の活用によってビジネスモデルや業務プロセスを変革することです。DXを実現するにはデジタル技術の活用が不可欠であり、ICTはDXを支える基盤という関係性になっています。

医療ICTが求められる背景

医療ICTが求められる背景には、以下のような理由が挙げられます。

  • 医療従事者の人手不足
    日本は少子高齢化が進んでおり、地域ごとの医師数や医療機能が偏在していることによって、地方を中心に医療従事者の人手不足が深刻化している状況です。医療従事者が不足している地域では十分な医療を提供できず、地域に居住する方が必要な治療を受けられない可能性があります。
  • 業務負担の増加
    高齢者人口の増加によって医療・介護のニーズは大きくなり、医療機関には将来より多くの業務負担がかかると考えられています。特に医療従事者は進歩する医療技術の習得や、法改正による変化にも対応する必要があり、業務負担の増加が課題となるでしょう。
    参考:厚生労働省ホームページ「2040年に向けた人口動態・医療需要等
  • 医療費負担の増大
    少子高齢化の進行により、国民1人あたりの医療費負担は増大を続けています。医療費負担を抑制するには医療の業務効率化や人件費の削減を進めるとともに、医療機関への通院・入院に至る前の予防医療の普及が重要とされています。
    参考:厚生労働省ホームページ「令和4(2022)年度 国民医療費の概況

医療ICTを導入して医療現場で情報通信技術を活用することで、日本の医療システムや医療機関が抱える各種課題の改善が期待できます。

医療ICTを導入する4つのメリット

医療ICTを導入する4つのメリット

医療機関が医療ICTを導入することで、診療業務の効率化やデータの一元管理、遠隔医療の実現といったメリットが得られます。
医療ICTを検討する医療機関は、以下で紹介する医療ICTの導入メリットを参考に、自院が抱える課題を医療ICTで改善できるかどうかをチェックしましょう。

診療を効率的に提供できる

医療ICTを導入すると、診断・治療を迅速におこなえるようになって、患者さまに効率よく診療を提供できます。診療業務の効率化は、医療機関の課題となりやすい医療従事者の人手不足の改善につながるポイントです。

医療現場には、各診療科を受け持つ医師や看護師の他に、薬剤師・放射線技師・臨床検査技師など多くの医療従事者が働いています。医療ICTを導入すると各分野の専門家がデータを共有できるため、業務に必要な情報を素早く取得して効率的に働けます。

また、医療ICTでは医療機器などをインターネットに接続する「医療IoT」や、人工知能の支援が得られる「医療AI」の活用も進んでいます。リアルタイムのモニタリングや、AIによる診断サポートなどの技術を導入することで、より精度の高い医療を患者さまに提供できるメリットもあるでしょう。

診療データの一元管理ができる

医療ICTの導入によって患者さまの診療データを一元管理することが可能となり、カルテの記録や検査結果の取り込みが楽になります。必要な診療データもすぐに確認できるため、患者さまに最適な治療を素早く提供できます。

診療データの一元管理は、医療機関同士や外部機関との連携を行うときにも役立つメリットです。たとえば患者さまが転院するとき、診療データを転院先の医療機関と共有すれば転院に伴う手続きをスムーズに進められます。

また、医療機関が収集した診療データは、病気にかかわる研究にも用いられます。医療ICTによって一元管理された診療データは情報の抽出や分析がしやすく、医学・薬学の発展に貢献することも期待できるでしょう。

医療費を削減する効果が期待できる

医療ICTを導入して業務効率化が進むことで、医療従事者が残業や休日出勤をするケースが減り、人件費を抑制しやすくなります。結果として医療費に占める人件費が少なくなり、医療費を削減する効果が期待できるでしょう。

また、医療ICTで導入する情報通信技術のなかには、患者さまのバイタル情報をリアルタイムで把握できるものが存在します。患者さまの体調や容態を管理しやすくなり、病気の発症や重篤化をする前に予防的な治療を提供することが可能です。

患者さまが入院したり、要介護状態になったりするのを防ぎ、医療費の増大を抑制する効果も期待できます。

遠隔医療を実現できる

情報通信技術を活用して遠隔医療を実現できることも、医療ICTを導入するメリットの1つです。

そもそも遠隔医療とは、遠隔地同士をオンラインでつないで行う、健康増進や医療に関する行為のことです。中でも、医療機関と遠隔地にいる患者さまをインターネットでつなぎ、オンライン上での診療や健康相談をおこなう医療サービスは「オンライン診療」と呼ばれます。

遠隔医療を実現すれば、患者さまが物理的な距離を気にせず医療機関を利用できるようになり、医師数や医療機関の偏在による問題を解消できます。

遠隔医療は、在宅医療を提供する医療機関にとっても有益なサービスです。在宅医療と遠隔医療を連携させることで、医療従事者が患者さまの自宅を訪問する頻度を減らせるようになり、在宅医療の業務負担を減らせます。

医療ICTの導入で注意したい3つのデメリット

医療ICTの導入で注意したい3つのデメリット

医療ICTの導入にはさまざまなメリットがあるものの、一方でいくつかのデメリットもあります。

医療機関は医療ICTの導入を決定する前に、以下で紹介するような医療ICTのデメリットを把握し、対処ができるかを考えておくことが重要です。

以下では、医療機関が医療ICTを導入するときに注意したい3つのデメリットを解説します。

医療ICTの初期費用や維持費用がかかる

医療ICTを導入するにあたって設備・機器の購入やサービス契約などの初期費用がかかり、導入後も維持費用が継続して発生します。医療機関にとって、初期費用や維持費用が経営負担となる点がデメリットです。

他にも、導入した設備・機器を使用する人材の確保や、運用にかかわる人材教育にもコストがかかる点に注意してください。

医療ICTの導入にかかる各種コストを対策するには、まずはスモールスタートで必要な部分にのみ医療ICTを導入することが大切です。導入後に効果や操作性などを分析・評価することで、対象の医療ICTをより広範囲に導入してもよいかを判断できます。

医療現場において医療ICT を受け入れる体制が必要となる

医療ICTの導入を成功させるには、医療現場において医療ICTを受け入れる体制が必要です。しかし、デジタル技術を扱うスキルは個々人によって違いがあり、医療ICTを導入する際の障害となる可能性があるでしょう。

たとえば電子カルテのように医療サービスの根幹となる情報通信技術は、医療現場で働くほとんどの医療従事者が扱える必要があります。医療機関はただ医療ICTを導入するだけではなく、医療従事者向けに医療ICTの教育をしなければなりません。

医療ICTの受け入れ体制を作るためには、導入する情報通信技術の事前説明や操作方法を学ぶ研修を行いましょう。さらに導入後も定期的にフォローアップを行うことで、医療現場全体で医療ICTに関わるスキルの向上を図れます。

セキュリティ対策を講じる必要がある

医療ICTで扱うデータには、患者さまの個人情報や、医療機関内の機密情報が含まれています。ヒューマンエラーでの情報漏洩や、サイバー攻撃によるセキュリティリスクを防げるよう、対策を講じなければなりません。

医療ICTのセキュリティ対策は、導入する情報通信技術によって異なります。たとえば電子カルテをクラウド上で共有するケースであれば、データの暗号化やアクセス制限、エンドポイントのマルウェア対策が必要です。

また、導入した医療ICTのソフトウェアの不具合や、停電などの自然災害によってシステムエラーが発生する可能性にも注意しましょう。サポート対応が充実しているベンダーを選んだり、バックアップを定期的に取ったりするなどの対処を決めておくことが大切です。

医療ICTの主な活用例4選

医療ICTの主な活用例4選

医療ICTの導入を検討するときは、医療ICTの活用例を把握することもおすすめです。どのような活用例があるかを知ることで、自院に適した医療ICTを選びやすくなるでしょう。

医療ICTの主な活用例を4つ挙げて、それぞれがどのような業務に役立つかを解説します。

電子カルテや電子処方箋の導入

電子カルテや電子処方箋は、従来は紙で作成されていたカルテ・処方箋を電子化し、パソコンなどで管理できるようにしたものです。電子化することでデータを簡単に運用できて、医療従事者同士や他医療機関との間で情報を共有しやすくなるメリットがあります。

また、電子カルテや電子処方箋を導入すれば、紙のカルテや処方箋を作成・保管する必要がありません。紙書類にありがちな汚損や紛失をするリスクがなくなり、管理コストも抑えられます。

電子カルテシステムは病床規模が大きい病院を中心に導入が進んでいるものの、病床規模が小さい病院や一般診療所では導入が進んでいない状況です。電子処方箋についても、薬局側の導入は進んでいる一方で、医療機関側の導入は低調となっています。

参考:
厚生労働省ホームページ「電子カルテシステム等の普及状況の推移
厚生労働省ホームページ「電子処方箋の普及拡大に向けた対応状況等

電子カルテ・電子処方箋はともに患者さまの情報共有に役立つものであり、医療機関は導入を検討したほうがよい医療ICTといえます。

オンライン診療の実施

情報通信技術を活用するとオンライン診療を実施できて、患者さまがどの地域に居住していても医療相談や診療を提供できます。医療機関が少ない地域に居住する患者さまにも専門的な医療サービスを提供でき、医療機関の利用率を向上させることが可能です。

オンライン診療で提供できる医療の形態には、医師と患者間で診療を行う「D to P」のほかに、以下のような種類があります。

種類形態
D to P with D患者側に医師が同席し、遠隔地の医師が診療を行う形態
D to P with N患者側に看護師が同席し、遠隔地の医師が診療や看護師への指示を行う形態
D to P with その他医療従事者患者側に薬剤師や理学療法士などの医療従事者が同席し、遠隔地の医師が診療や医療従事者への指示等を行う形態

参考:厚生労働省ホームページ「オンライン診療その他の遠隔医療の推進に向けた基本方針

オンライン診療は医療資源を有効活用できる方法です。厚生労働省も医師非常駐の診療所の開設要件から「へき地等」を外すなど、オンライン診療拡大への改革を進めており、将来的にオンライン診療の需要は増すと考えられます。

参考:厚生労働省ホームページ「特例的に医師が常駐しないオンライン診療のための診療所の開設について

ウェアラブルデバイスによる遠隔でのモニタリング

医療ICTでは、患者さまが身に着ける医療用ウェアラブルデバイスを導入するケースも多く見られます。ウェアラブルデバイスを通して患者さまの心拍・脈拍・血圧といったバイタル情報を遠隔からモニタリングする仕組みです。

ウェアラブルデバイスによるモニタリングを導入することで医療従事者がバイタルを測定する手間を省き、業務効率化や人手不足の解消ができます。ウェアラブルデバイスに位置情報を取得する機能もあれば、在宅医療を選択した患者さまの安否確認もできるでしょう。

遠隔画像診断システムの導入と活用

遠隔医療を実現する医療ICTのなかには、遠隔画像診断システムもあります。遠隔画像診断システムとは、CT・MRIなどで撮影した医用画像を外部の医療機関や事業者に送信し、放射線診断専門医に画像診断を依頼できるシステムです。

遠隔画像診断システムで画像診断を外部に委託すれば、自院の放射線科診断専門の業務負担を軽減できます。地域の健康診断や職域健診を受託する医療機関では撮影する画像が膨大な枚数になるため、遠隔画像診断システムを活用することでスムーズに画像診断をおこなえるでしょう。

まとめ

医療ICTとは?まとめ

医療ICTは、医療現場で利活用できるように最適化された情報通信技術のことです。導入すると診療業務の効率化や診療データの一元管理ができるといったメリットがあり、医療機関が抱える課題の解決につながります。

医療ICTを導入する際は自院の課題を分析して、導入によって高い効果を得られるICTを選ぶことが大切です。たとえばCT・MRI画像の読影業務の効率化が課題である場合は、画像診断を外部に委託できる遠隔画像診断システムの導入が適しています。

イリモトメディカルでは遠隔画像診断サービスを提供しております。読影業務において、人材不足や業務負担の大きさなどの課題を抱えている医療機関の方は、イリモトメディカルにご相談ください。
<イリモトメディカルの遠隔画像診断サービスについて>

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