Column コラム

2025.01.07

病院がコスト削減するにはどうすればいい?コストの種類や具体的な方法など解説

病院がコスト削減するにはどうすればいい?コストの種類や具体的な方法など解説

流行病や物価高騰などの影響により、昨今では経営難に陥る病院が散見されます。収益をコントロールすることが難しいなか「病院経営に必要な対策は?」「病院でコスト削減するには何をすれば良い?」などと悩んでいる方も多いことでしょう。

病院の経営を維持するためには、スタッフ全体でコスト削減に努めることが重要です。

この記事では、病院のコスト構造や具体的なコスト削減の方法などについて解説します。経営に悩んでいる経営者の方や、コストの削減の方法に迷っている担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

病院がコスト削減に努めることの重要性

病院がコスト削減に努めることの重要性

近年、日本全体の病院経営は厳しい状況に直面しています。全日本病院協会によると、赤字経営の病院の割合は、2018年の67.6%から、2023年度には83.3%まで増加しています。

参考:全日本病院協会「2024年度 病院経営定期調査 概要版 -最終報告(集計結果)-」

この背景には物価高による材料費の高騰や、人件費の増加、新型コロナウイルスの流行などによる影響があります。

病院の収益は主に患者数と診療報酬によって決まるため、個々の病院が自主的にコントロールすることは困難です。患者数は地域の人口や疾病の流行などで大きく左右され、診療報酬は国の政策によって決定されます。

このような状況下で病院が経営を継続し、赤字を減らしていくために、コスト削減は重要な対策です。具体的には、医療材料や医薬品の購入の見直しや、業務内容の改善による人件費の適正化などが挙げられます。

しかし、コスト削減を実行する際には、医療の質や安全性を損なわないよう、細心の注意を払う必要があります。職員のモチベーションの低下を招かないよう、経営状況の共有を図りながら、全職員の理解や協力を得ることも重要です。

コスト削減は単なる節約ではなく、病院の経営を続けるための取り組みとして位置づけていく必要があります。

病院で発生するコストの種類

病院で発生するコストの種類

病院で発生するコストの種類は、大きく分けて以下の5つがあります。コスト削減にあたり、まずは以下を参考に現状を把握しましょう。

  • 材料費
  • 人件費(給与費)
  • 委託費
  • 減価償却費
  • その他の経費 

材料費

材料費は、病院で医療サービスを提供するにあたり必要となる物品の費用です。主な内訳は以下のとおりです。

  • 医薬品費:投薬や注射に使用する薬品の費用
  • 給食材料費:入院患者の食事に使用される食材の費用
  • 診療材料費:ガーゼやレントゲンフィルムなどの医療用消耗品の費用
  • 医療消耗器具備品費:注射針や体温計などの小型医療機器の費用

人件費(給与費)

人件費は、雇用や採用のために支払う必要がある費用のことで、病院経営に関わるコストにおいて大きな割合を占めます。これには以下のような費用が含まれます。

  • 給与・賞与:医師・看護師を含む医療従事者や事務職員などの基本給与と賞与
  • 社会保険料:健康保険、厚生年金、雇用保険などで事業者が負担する費用
  • 退職給付費用:退職金や年金に関連する費用
  • 採用費用:求人広告、面接、研修などの費用

委託費

委託費は、病院が外部の専門業者などに業務を委託するときに発生する費用です。主な例としては以下のようなものです。

  • 検査委託費:特殊な検査を外部の検査機関に依頼する費用
  • 給食委託費:病院食の調理を外部の業者に委託する費用
  • 寝具委託費:ベッドリネンのクリーニングや管理を外部の業者に委託する費用
  • 医事委託費:医療事務や請求業務を外部の業者に委託する費用
  • 清掃委託費:院内の清掃を外部の業者に委託する費用
  • 保守委託費:医療機器や建物設備などのメンテナンスを外部の業者に委託する費用

減価償却費

減価償却費は、病院の設備や建物など固定資産の費用を、一定の期間にわたり分割して支払うものです。対象となるのは主に以下のような固定資産です。

  • 医療用機械備品:CT装置やMRI装置などの検査機器、治療や手術に使用する医療機器など
  • 建物:病院の建物など
  • 建物附属設備:空調設備や電気設備など
  • 車輌:外回り業務で使用する自動車など
  • 船舶:離島の医療などで使用する船舶

その他の経費

上記以外で病院運営に必要になる経費として、以下の項目が挙げられます。

  • 旅費交通費:出張や研修などの移動に関わる費用
  • 通信費:電話、インターネット、郵便などにかかる費用
  • 水道光熱費:電気、ガス、水道などの使用料
  • 消耗品費:事務用品や清掃用品などの費用

病院における経営コストの構造

病院における経営コストの構造

病院における経営コストは、主に人件費・材料費・減価償却費・その他の経費で構成されています。一般病院、療養型病院、精神病院のいずれにおいても人件費が最大の支出項目になっており、全体の5〜6割を占めています。

人件費の主な割合は、一般病院で約53.5%、療養型病院で約59.9%、精神科病院で約62.0%です。次に大きな割合を占めるのは材料費で、一般病院では約22.6%、療養型病院と精神科病院では約12%になっています。

参考:独立行政法人福祉医療機構ホームページ「2022年度 病院の経営状況について」

上述した内容を踏まえると、病院の経営改善には人件費の適正化が重要な課題となります。しかし、医療の質を維持しながら人件費を削減することは、あらゆる工夫が必要です。ITの導入による業務効率化や適切な人員配置の見直しなど、総合的なアプローチが大切となるでしょう。

あわせて、材料費や経費の見直しも併せておこなうことで、バランスの取れたコスト削減が期待できます。

病院でコスト削減を検討すべき項目とその方法

病院でコスト削減を検討すべき項目とその方法

病院経営にかかる費用のなかでも材料費や人件費、委託費、一部の経費などは、工夫次第で大幅なコスト削減が見込めます。具体的にコスト削減できるポイントについて見ていきましょう。

材料費

材料費を削減するには、医薬品や診療材料などの仕入れ価格を確認しましょう。相場よりも高い金額となっている場合は、適正化することでコスト削減を図れます。病院内の在庫量を見直すことにより、過剰在庫による廃棄を減らすことも重要です。

人件費

人件費はスタッフ全体の業務効率の改善することで、コスト削減が望めます。各部門の業務量に応じた人員配置をおこなったり、業務のIT化を進めたりすることで、生産性の向上が期待できるでしょう。

委託費

委託費はサービス内容を見直したり、不要なオプションを解約したりすることで、コスト削減につながる可能性があります。固定費を必要な範囲に限定すると良いでしょう。

経費

契約内容の見直しなどで通信費や水道光熱費などの経費削減に努めることは、大幅なコスト削減につながります。その他にも、スタッフ一人ひとりが節水・節電を意識できるよう周知するも効果的でしょう。

病院が経営コストを削減する方法

病院が経営コストを削減する方法

病院が経営コストを削減する方法として、以下が挙げられます。

  • 材料の仕入先との価格交渉をする
  • 在庫数や委託業務の見直す
  • 通信費や水道光熱費の契約を見直す
  • 新たなサービスを導入しスタッフの業務効率化を図る

それぞれ詳しく説明していきます。

材料の仕入先との価格交渉をする

病院の経営コストを削減するために、医薬品や診療材料などの仕入れ価格の交渉を検討してみましょう。長年にわたり取引がある場合は、市場価格からかけ離れた価格で購入している可能性もあります。定期的にメーカーや卸業者と価格交渉をおこない、適正な価格での仕入れを目指すことが重要です。

価格交渉に応じてもらえた業者には購入量を増やすなどの対応も心がけ、信頼関係を維持することも意識しましょう。

在庫数や委託業務の見直す

在庫数や委託業務の見直しは、コスト削減において重要なポイントです。過剰在庫は、資金が在庫として固定化されてしまうほか、保管コストの増加や使用期限切れによる廃棄が直接的な損失となります。適正な在庫数を決めて定期的に見直すことで、これらのリスクを抑えることが可能です。

委託業務は契約の更新時期に合わせて内容を精査し、不要な契約を解除すると良いでしょう。

通信費や水道光熱費の契約を見直す

固定費のなかでも、通信費や水道光熱費は、契約先の変更により大幅なコスト削減が期待できるものです。特に光熱費は以前より電力会社の選択肢が増え、会社によって基本料金が異なるため、複数の会社を比較して病院の規模に合った契約を選択すると良いでしょう。また、スタッフ一人ひとりに節電・節水を心がけるように周知することも大切です。

契約内容の見直しに加え、スタッフの協力を得ながら日常の取り組みを習慣化させることが、効果的なコスト削減につながります。

新たなサービスを導入しスタッフの業務効率化を図る

スタッフの業務効率化は、人件費のコスト削減につながる重要な取り組みです。例えば、自動精算機の導入や通信機器を使用したオンライン診療の実施により、受付や会計業務の負担軽減につながることがあります。

そのほか、業務代行を依頼できるサービスを利用すれば、スタッフの残業時間が減り、人件費のコスト削減にもつながるでしょう。

また、検診が多い医療機関では、検査画像を読影するにあたり放射線診断専門医が足りないケースも多いようです。そのような場合には、遠隔読影サービスがおすすめです。

遠隔読影サービスは、CTやMRIなどで撮影した医療画像を、外部の病院や企業に送信し、医療画像の読影から診断レポート作成まで一連の作業を委託できる仕組みです。人手不足だけでなく、スタッフの業務効率化や地域格差を解消できるメリットもあります。

遠隔読影サービスについては以下の記事でも詳しく解説していますので、あわせてお読みください。
>>遠隔読影とは?選ぶ上での注意点・料金など分かりやすく解説

病院の経営コスト削減につながった事例

病院の経営コスト削減につながった事例

経営改善に向けて、全国の病院ではさまざまな工夫によるコスト削減の取り組みがおこなわれています。以下に実際の成功事例をいくつかご紹介します。

  • 給食サービスの見直し
    給食の外部委託をやめ、院外調理済み食品を導入することで委託費のコスト削減を図った。冷凍の調理済み食品を提供時に再加熱する方式を導入することで、黒字運営が達成できた。
  • 清掃ロボットの導入
    清掃ロボットを導入して委託費のコスト削減を図った。外来診察が終わった後、清掃ロボットに共用の廊下を清掃してもらうことで、清掃員3人分の委託費のコスト削減が実現できた。
  • 職員寮の契約見直し
    不動産会社とフリーレント契約を結ぶことで、職員寮(賃貸住宅)の経費のコスト削減を図った。職員寮を利用した職員の退職後、空室になる一定期間の家賃を無料にする契約により、長期的な住宅費用のコスト削減につながった。
  • 業務委託費用の見直し
    委託職員の人件費が自院の職員より高いことがわかり、医事課の業務を自院でおこなうことにした。結果的に数%の人件費をコスト削減できた。

参考:日経メディカル「「4重苦」時代の医療機関のコスト削減策」
参考:徳洲会グループ「コスト削減の成功例 湘南鎌倉総合病院が報告」

このように病院独自の工夫によってコスト削減を実現している例も多く見られます。経営コストの削減を成功させるには、スタッフの理解や協力を得ながら、病院全体で見直すべき費用を見極めることが大切です。

継続的な費用の見直しや業務効率化の実現が、病院の経営維持につながるでしょう。

まとめ

病院における経営コスト削減のためには、人件費の削減や、材料費の削減が重要です。

この記事では、病院の経営維持に重要なコスト削減について解説しました。

あらゆる影響により日本の病院経営が厳しくなっているなか、黒字に転換していくためには、コスト削減が不可欠です。病院で発生するコストは主に、材料費、人件費、委託費、減価償却費、その他の経費が挙げられ、その中でも人件費や材料費は病院全体で大きな割合を占めています。

病院における経営コスト削減のためには、業務効率化による人件費の削減や、価格交渉などによる材料費の削減が重要です。在庫数や委託業務契約、通信費・水道光熱費の契約を見直すことで、大幅な病院のコスト削減につながることもあります。定期的に内容を見直し、スタッフの協力を得ながら対策に取り組むことが、効果的なコスト削減につながるでしょう。

医療画像の読影業務に携わる放射線診断専門医が足りず、スタッフ一人ひとりへの負担が大きいことに加え、残業代による人件費が増えることもあるでしょう。読影業務の効率化を図りたい場合は、遠隔読影サービスを利用することも1つの方法です。

イリモトメディカルの遠隔読影では、放射線診断専門医や各科の専門医による質の高い読影サービスを提供しています。また、薬事承認済みの高精度AIを使用することで見落としなども徹底的に防ぎ、質の安定にも努めています。

遠隔読影サービスを検討している方は、お気軽にご相談ください。

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