Column コラム
2024.12.20
眼底読影とは?選ぶ上での注意点・料金など分かりやすく解説

健康診断や眼科の診療などで使用される眼底検査。さまざまな疾患の兆候を捉えるのに有用な検査ですが、眼底読影は専門性の高い検査であるため、眼科専門医が確保できなかったり、人数が足りなかったりする医療機関においては「専門ではないが学ばなければいけないだろうか」と考えている医師もいることでしょう。
そこでこの記事では、眼底読影の目的や課題、眼底読影を支援する遠隔読影サービスについて解説します。眼底読影の遠隔読影サービスを選ぶときの注意点なども説明していますので、眼底読影を学びたい検診施設の方や、眼科専門医が足りず眼底読影まで十分に手が回らない医療機関の方は、最後までぜひお読みください。
眼底読影とは

眼底読影とは、眼底カメラで撮影された眼底画像を専門医が詳細に観察することで、さまざまな眼疾患や全身疾患の早期発見に役立つ検査です。非侵襲的で簡便な方法で、眼底の網膜や視神経、血管などの状態を評価できます。
眼底にある網膜血管を観察することで、高血圧症や動脈硬化の有無などを確認でき、全身の健康状態を把握することに役立ちます。網膜血管は体内で直接観察できる唯一の血管でもあり、状態から血圧上昇の原因をある程度判定できるのです。
眼底読影は緑内障や糖尿病網膜症、加齢黄斑変性などの早期発見に関連することが多くあります。これらの疾患は、適切な時期に治療を開始することで、失明や重度の視覚障害を予防できる可能性があるものです。
このように、眼底読影は複数の眼疾患に対するスクリーニングが可能であり、健康診断や糖尿病健診などで広く活用されています。
眼底読影が必要な理由

眼底読影が必要な理由は、重度の視覚障害や失明に至る可能性がある疾患を早期発見できるためです。眼底には網膜や視神経、血管など、視覚に関わる重要な組織が集中しており、これらの状態を評価することで、多くの眼疾患や全身疾患の兆候を捉えられます。
特に、緑内障や糖尿病網膜症、加齢黄斑変性などは初期段階で自覚症状がほとんどないため、早期発見には定期的な眼底検査が重要です。これらの疾患は失明や重度の視覚障害を引き起こす可能性がありますが、早期発見と適切な治療開始により、重症に至ることを回避できる可能性が高まります。また、前述したように高血圧症や動脈硬化などの兆候も確認できることで、あらゆる全身疾患の発病リスクがないか確かめられるのも利点です。
40歳を過ぎたら年1回程度の定期的な眼底検査を受けることが推奨されており、眼や全身の健康を障害にわたり保つために重要な役割を果たしています。
眼底読影の課題

眼底読影の課題は、主に眼科専門医の地域偏在や不足です。眼底画像を専門的に読影するには、豊富な臨床経験を持つ眼科専門医が必要ですが、都道府県によっては深刻な眼科専門医の不足も見られます。
全国の眼科専門医の足下充足率(医師不足の度合いを示す指標)は、都道府県によって大きく偏っているのが現状です。東京都や大阪府、京都府の眼科専門医数は、適正数の1.2〜1.36倍であるものの、青森県や岩手県、秋田県、福島県、新潟県は0.51〜0.7倍となっています。
参考:厚生労働省ホームページ「2023年度専門医シーリングについて」
これにより、現在、地域によっては眼底読影の質を十分に担保できない状況です。特に地方の小規模病院やクリニックでは、眼科専門医の確保が困難であり、早急な対策が求められています。眼科専門医の地域偏在は、患者の診断や治療に影響を与える可能性があるため、重要な課題となっています。
眼底読影を支援する遠隔読影サービスとは

眼科専門医が不足している医療機関においては、遠隔読影サービスを利用することで、業務の効率化や診断の精度安定につながるでしょう。遠隔読影サービスとは、医療機関で撮影された眼底画像をインターネット経由で外部の病院や企業に送信することで、読影を依頼しレポートを受け取れるシステムです。
遠隔読影を依頼する際の流れ
遠隔読影サービスで眼底読影を依頼する際の流れは以下のとおりです。
- 医療機関での撮影
まずは、医療機関で眼底画像を撮影します。眼底画像は、十分な読影業務がおこなえるように高品質である必要があります。 - 画像の送信
撮影された眼底画像を、専用のサーバーやクラウドシステムを介して、遠隔読影をおこなう病院や企業に送信します。この際、情報セキュリティの観点から、VPNなどの暗号化通信が使用されることが多いです。眼底画像は通常、病院内のPACS(医療用画像管理システム)からクラウドベースの遠隔読影システムにアップロードされます。 - 眼科専門医による読影
送信された画像は、遠隔読影を担当する病院や企業に在籍している眼科専門医によって読影されます。読影業務は、眼科の専門病院や大学病院などに所属している眼科専門医が担うこともあります。 - レポートの作成と返送
読影業務をおこなった眼科専門医が読影レポートを作成します。読影レポートには、診断結果や所見のほか、推奨される治療方針が記載されることもあります。このレポートは暗号化されたデータ形式で依頼元の医療機関に返送されます。 - レポートの受信と活用
医療機関は受信したレポートを確認し、患者の診療や健康診断の結果報告に活用します。
上述した一連のプロセスは、高速かつ安全性の高いインターネット接続を利用しておこなうのが基本です。また、情報漏えいを防ぐため、画像診断用端末内にはデータを残さないシステムが望ましいとされています。遠隔読影サービスを利用開始する際には、このような通信環境の構築に関してもサポートを受けられますので、まずは相談してみると良いでしょう。
遠隔読影サービスは、眼科専門医の不足や、地域間の医療格差を解消する有効な手段として、今後さらに重要性が高まると考えられています。
遠隔読影サービスのメリット
眼底読影の遠隔読影サービスを導入することで、以下のメリットがあります。
- 眼科専門医による質の高い読影が可能
遠隔読影サービスを利用すると、眼科専門医が在籍していない医療機関でも、依頼先の眼科専門医による質の高い眼底読影が可能になります。まれな疾患や複雑な症例に対しても適切に診断できる可能性が高まります。 - 医師不足による業務負担を軽減できる
遠隔読影サービスは、眼科専門医が不足している医療機関にとって、眼底読影を代行してもらえる点が大きな魅力です。検査数と眼科専門医の人数が見合っていない場合でも、読影の質を維持しながら効率的に診療を進められるでしょう。医師やその他の医療スタッフの負担が軽減され、緊急性の高い症例への対応などに集中できるようになります。 - 地域の医療格差が減る
遠隔読影サービスは、地域間の医療格差を解消する有効な手段となります。眼科専門医がいない地域や過疎地、離島でも、都市部の病院と同様の画像診断が可能になるでしょう。
眼底読影の遠隔読影サービスを選ぶうえでの注意点

眼底読影の遠隔読影サービスを選ぶうえでの注意点は以下の6つです。
- 眼科専門医が在籍しているか
- 眼底検査に対応しているか
- 緊急対応が可能か
- 見落としや記載ミスの防止対策をしているか
- レポートが返送されるまでの時間はどのくらいか
- セキュリティ対策を重視しているか
それぞれ詳しく見ていきましょう。
眼科専門医が在籍しているか
眼底読影は高度な専門知識を要するため、遠隔読影サービスを提供する病院・企業に眼科専門医が在籍しているかどうかを確認することが重要です。遠隔読影サービスの提供元によって、在籍している医師の診療科は異なります。
実績豊富な眼科専門医に読影を依頼できると、より正確で信頼性の高い診断結果を得られるでしょう。
眼底検査に対応しているか
遠隔読影サービスを提供する病院・企業によって、対応可能な検査の種類や得意分野は大きく異なります。そのため、眼底読影に対応しているかどうかを必ず確認しましょう。
緊急対応が可能か
医療現場では予期せぬ事態が発生する可能性があるため、緊急時にも迅速に対応してもらえるサービスを選ぶことが重要です。仮ネットワークの突然の障害など不測の事態があった場合、24時間365日トラブル対応をしてもらえるシステムがあると、臨床業務に大きな支障がなくなります。
見落としや記載ミスの防止対策をしているか
眼科専門医によるダブル読影やAIを活用した精査などにより、眼底読影の見落としやレポートの記載ミスに対する対策が取られているか確認しましょう。読影の精度を高め、患者の安全を確保するためには、これらの対策が不可欠です。
レポートが返送されるまでの時間はどのくらいか
眼底読影の読影依頼をしてから、眼科専門医が作成したレポートが返ってくるまでの時間を確認しましょう。レポート返送までの時間は、患者への診断結果の伝達や、治療計画の立案に影響します。
一般的には、翌営業日もしくは数日かかることが多いですが、緊急読影を依頼することで数時間後に返送してもらえる場合もあります。医療機関の営業時間や患者のニーズに合わせて、適切な返送時間で対応できるサービスを選ぶことが大切です。
セキュリティ対策を重視しているか
眼底読影の遠隔読影サービスを選ぶときは、セキュリティ対策に力を入れているかも確認しましょう。遠隔読影は患者の画像データや個人情報と外部とやり取りする必要があるため、セキュリティ対策を徹底する必要があります。
迷った場合は、個人情報を適切に管理している事業者が取得できる「ISMS」や「プライバシーマーク(Pマーク)」を保持している企業を選ぶと良いでしょう。
遠隔読影サービスの比較基準について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
>>遠隔読影の比較基準とは?サービス内容・注意点など解説
眼底読影の遠隔読影を依頼するための費用

眼底読影の遠隔読影サービスを導入する際は、主に初期費用と月額費用、読影費用の3つの料金が必要になります。
- 初期費用:数万〜数百万円
初期費用は、専用回線や端末の設置工事、さまざまなシステムの導入、複数の端末での連携作業などによって大きく異なります。既存のインターネット環境で利用できる場合は費用が抑えられる傾向にありますが、新たに専用の通信環境や機器を整備する必要がある場合は、その分費用がかかる可能性があります。 - 月額費用:3〜8万円
月額費用には、システムの運用費用やデータの管理費用が含まれます。サービスを導入する端末の台数によっても変動するため、複数の端末で利用する場合はより高額になることがあります。 - 読影費用:1件500〜2,000円
読影費用は眼底読影の遠隔読影を依頼する際に毎回発生する金額です。両眼や片眼、依頼件数によって変動します。一部のサービスでは、健康診断等での読影依頼も受け付けており、大量の読影依頼がある場合は別途相談に応じてくれる場合もあります。
まとめ

本記事では、眼底読影の概要や、医療機関の眼底読影をサポートする遠隔読影サービスについて詳しく解説しました。
眼底読影は、眼底カメラで撮影した画像から眼底の詳細な状態を観察し、眼疾患や全身疾患の兆候を早期発見するための検査です。眼底に存在する網膜や視神経、血管などの状態を評価することで、失明や重度の視覚障害につながりやすい疾患などの発病リスクを確かめられます。
しかし、眼科専門医の地域偏在により、地域によっては眼底読影の質を十分に担保できていないのが現状です。
医療機関の眼科専門医の不足に役立つのが遠隔読影サービスです。眼底読影の業務をサポートする遠隔読影サービスは、業務負担の軽減や地域格差の現象などのメリットがあります。
遠隔読影サービスを実際に選ぶときは、眼底専門医の在籍や眼底読影の対応について必ず確認することが大切です。
イリモトメディカルの遠隔読影では、30名以上の放射線診断専門医や各科の専門医が読影業務をサポートします。眼底読影では、眼科専門医によって質の高い読影業務を提供することが可能です。眼底読影の遠隔読影を検討されている方は、お気軽にご相談ください。