Column コラム
2024.11.04
遠隔読影の精度は高いのか?専門医の視点から徹底解説
遠隔読影は、オンラインで画像検査のデータを送ることで、日々の臨床で必要になる読影業務を遠方の企業や病院の放射線診断専門医にも依頼できる仕組みです。放射線診断専門医が読影業務を担うことにより、比較的高い精度を得られやすい画像診断法として注目されていますが、実際の利便性について気になる方もいるのではないでしょうか。
この記事では遠隔読影の精度が高い理由や、遠隔読影を導入するメリットなどについて解説します。専門医の視点から、精度の高いサービスを選ぶポイントなどもお話しますので、遠隔読影の導入を検討している方はぜひ最後までご覧ください。
遠隔読影の精度は高い?
遠隔読影が適切に実施された場合、通常の読影業務と同等かそれ以上の高い精度を維持できると考えられています。
遠隔読影とは、医療機関で撮影したCTやMRIなどの画像を、インターネットを経由して読影医が在籍している他の病院や企業に送信し、代わりに画像診断をおこなってもらうサービスです。遠隔地にいる放射線診断専門医や各診療科の専門医などが、豊富な経験と高度な専門知識を活かして精度の高い画像診断をおこないます。一般検診や企業健診で活用されるほか、二次的な診断や作成した読影レポートの再チェックなどの体制も整っており、検査結果の正確性を担保しています。
さらに、遠隔読影では読影業務にかける時間の制約が少ないため、読影医が十分に画像を精査し、慎重に診断することが可能です。また、AIなどの最新技術を補助的に活用することで、人間の目では見逃しやすい変化を検出し、さらに画像診断の精度を向上できます。
しかし、遠隔読影の精度を維持するためには、高品質な画像の撮影や安全な画像送信のシステム、適切な情報管理などの要素が重要です。これらの条件が満たされることで、遠隔読影は高い精度を実現し、医療の質の向上に貢献できます。
遠隔読影の流れ
遠隔読影では、医療機関で撮影した医用画像を、依頼先の企業や病院に送信することで読影を依頼し、最終的に読影レポートが返却されます。この過程は以下の5つのステップで構成されています。
医療機関で画像を撮影する
精度の高い遠隔読影のプロセスは、医療機関でCTやMRI、マンモグラフィなどの画像を撮影することから始まります。通常の検査と同様に、高品質な画像を撮影するために、医療スタッフによる機器の設定など適切な撮影技術が求められます。読影の質を高めるには、正確に判断できる画像が不可欠です。
遠隔読影の依頼先へ画像を送信する
撮影された医療画像に患者情報を紐づけ、遠隔読影の依頼先である企業や病院に送信します。この際、個人情報保護の観点から、個人を特定できるような情報は必ず事前に暗号化することが重要です。送信には高速かつ安全なインターネット接続が使用され、データの安全性が確保されます。
放射線診断専門医などが画像を診断する
送信された画像は、遠隔読影の依頼先である企業・病院に在籍する放射線診断専門医や、各診療科の専門医によって診断されます。この際、見落としやミスを防ぐために、第三者やAIによるダブルチェックがおこなわれることが多いです。これにより、画像診断の精度が向上し、より信頼性の高い結果が得られます。
放射線診断専門医などが読影レポートを作成する
画像診断で得られた結果をもとに、依頼先の読影医が詳細な読影レポートを作成します。読影レポートには診断結果だけでなく、推奨される追加の検査や治療方法なども記載する場合があります。
読影レポートの内容は、患者の治療方針を決定するうえでも重要です。専門医の知識と経験が含まれた読影レポートは、依頼元の医療機関にとって貴重な情報源になります。
読影レポートが医療機関に送信される
企業や病院で作成された読影レポートは、依頼元の医療機関にオンラインで送信されます。画像送信時と同様、個人情報を配慮した安全なネットワークを介することが一般的です。
医療機関は受け取った読影レポートの内容をもとに患者の診断を進めていきます。必要に応じて追加の検査や治療方針の決定がおこなわれます。
遠隔読影の精度が高い理由
遠隔読影の精度が高い理由として、大きく2つのポイントが挙げられます。
- 専門医によるレベルの高い読影業務
- ダブルチェックにも対応
これらにより、地域や医療機関の規模に関わらず、高品質な画像診断を受けられる環境が整備されつつあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
専門医によるレベルの高い読影業務
遠隔読影では放射線診断専門医や各診療科の専門医によって、質の高い画像診断がおこなわれます。これらの専門医は、豊富な経験と高度な専門資格を持ち、さまざまな症例に対応する能力を有しています。
たとえば、大学病院や専門の医療機関で長年の経験を積んだ放射線診断専門医が読影を担当した場合は、より正確で詳細な診断が可能になります。依頼先によっては、自院の医師より経験豊富な医師による読影結果を受けられることもあるでしょう。専門分野に特化した読影医が担当することで、特定の疾患や症状に関するより深い洞察が得られる場合もあります。
これらにより、一般的な読影では見逃されやすい微細な変化や、まれな症例も適切に診断される可能性が高まるのです。
ダブルチェックにも対応
遠隔読影の精度が高いもう一つの理由は、ダブルチェックまで対応してもらえることです。多くの遠隔読影サービスでは、一人の読影業務に加えて、別の読影医による二次的な読影や読影レポートのチェックがおこなわれます。
万が一ヒューマンエラーにより見落とされた所見も、ダブルチェックにより発見されやすくなります。がん検診における微小な病変の発見や、複雑な症例の正確な診断にも効果を発揮するでしょう。これにより診断の質が向上し、より精度の高い結果を得ることが可能になります。
遠隔読影のメリット
遠隔読影サービスを使用することで、全国の医療機関における読影医の不足が解消することが期待できます。地域間の医療格差が解消されたり、患者に提供する画像診断の質が安定したりすることもメリットです。
読影医不足による問題が解消する
遠隔読影サービスを活用すると、読影医不足により生じる問題を解消できることがメリットです。日本では放射線診断専門医の数が不足しており、検査数に対する読影医の数は今後も見合わないことが報告されています。
しかし、遠隔読影サービスにより読影医の業務を補助することで、結果として作業効率の向上が期待でき、質を保ちながら1人あたりが対応できる量を増やせるでしょう。これにより、精度を保ちながら、より多くの検査に対応することが可能になります。
地域間の医療格差が解消する
遠隔読影サービスは、地理的な制約を超えて高品質な医療サービスを提供することを可能にします。たとえば、医師の数が少ない離島や過疎地域の非専門医でも、放射線診断専門医に読影を依頼できるようになります。これにより、患者は居住地に関係なく精度の高い画像診断を受けられるのです。
患者に提供する画像診断の質が安定する
遠隔読影によって、専門的な知識を持つ読影医による診断を依頼できることにより、画像診断の質が安定し、より正確な診断が可能になります。見落としやすいがんの診断ミスが経ることで、早期発見の可能性も高められるでしょう。
精度の高い遠隔読影サービスを選ぶポイント
より精度の高い遠隔読影サービスを選びたい場合は、サービスを見比べる際に以下の項目を確認してみてください。
- 読影医の数や専門医の資格が充実しているか
- 見落としや記載ミスの対策があるか
- 依頼したい検査内容が含まれているか
- 画像診断支援AIが備わっているか
それぞれ詳しく説明していきます。
読影医の数や専門医の資格が充実しているか
遠隔読影サービスのなかでも、読影医の数が充実している病院・企業では、一つの症例に対して適切な時間をかけて対応することが可能です。時間をかけることで詳細な分析や慎重な判断がおこなえるため、画像診断の精度が向上するでしょう。
また、放射線診断医師や各診療科の専門医の資格を持つ医師が在籍しているかどうかも確認しましょう。専門的な知識と経験を持つ医師による読影は、より正確で精度の高い診断結果につながります。
見落としや記載ミスの対策があるか
遠隔読影サービスを選ぶときは、がんの見落としや読影レポートの記載ミスに対する対策が徹底されているかどうかを確認することも重要です。特に、専門性の高い医師によるダブルチェックが含まれているサービスを選ぶと良いでしょう。
依頼したい検査内容が含まれているか
医療機関で実施している人間ドックなどの検査内容が、遠隔読影サービスの対象に含まれているかどうか確認しましょう。それらの検査に関連する専門医が在籍しているかどうかも重要なポイントです。
仮に乳がん検診のマンモグラフィ読影を依頼したい場合、乳腺の専門医やマンモグラフィ読影認定医が在籍している企業を選ぶことで、より精度の高いレポートを受けることが可能になります。
画像診断支援AIが備わっているか
画像診断支援AIが備わっているかどうかも確認すると良いでしょう。
AIは事前に十分な量のデータを確認させることで、指示された画像を高速で処理しながら人間の目では見逃しやすい微細な変化を検出します。補助的に活用することで、より精度の高い診断結果を得ることが可能です。
遠隔読影サービスを導入するときの注意点
遠隔読影サービスを適切に利用するためには、個人情報の取り扱いに気をつける必要があります。また、レポートが返却されるまでの時間は企業によって異なるため、事前に確認することが大切です。
個人情報の取り扱いに気をつける
遠隔読影サービスを利用する場合、外部との個人情報へのやり取りが発生するため、セキュリティ面に細心の注意を払う必要があります。医療機関のスタッフに対して、個人情報保護に関する定期的な研修を実施するだけでなく、以下についても対策することが重要です。
- 利用者やシステムに応じた複数のアクセス制限を設定する
- 個人情報の匿名化やデータの暗号化を徹底する
- 端末内の使用済みデータを削除する
- 端末のOSやアンチウイルスソフトウェアなどを最新版にする
さらに、遠隔読影サービスを提供する企業との間で、個人情報保護に関する契約を締結し、責任の所在を明確にすることも考慮する必要があります。
レポート返却までの時間が企業によって異なる
遠隔読影サービスを提供している企業によって、読影を依頼してからレポートが返却されるまでの時間が異なることに注意が必要です。土曜日や企業の営業時間外の依頼は、対応が後回しになる可能性があります。
そのため、医療機関の健診スケジュールに合わせて、必要なタイミングで結果が得られるかどうかを事前に確認することが重要です。特に、以下の点について確認しておくことをおすすめします。
- 通常の読影依頼からレポート返却までの標準的な所要時間
- 緊急を要する場合の対応の可否と所要時間
- 繁忙期における処置能力や想定される遅延
これらの情報を事前に把握することで、効率的な診療計画を立てることができ、患者への適切な対応が可能になります。
まとめ
この記事では遠隔読影の精度について詳しく解説しました。
遠隔であっても、適切に実施することで、高い精度を維持できます。遠隔読影でも精度を担保するためのポイントとしては、放射線診断専門医や各診療科の専門医が豊富な経験と専門知識を活かして読影すること、ダブルチェックを欠かさないことが挙げられます。さらに、AIなどの技術を補助的に活用することで、遠隔読影の精度をさらに向上できます。
より精度の高い遠隔読影サービスを選びたい場合は、読影医の数や専門資格の有無、がんの見落としや読影レポートの記載ミスなどの対策、AIの活用状況などを確認することが重要です。これらの要素が充実し、医療機関のニーズに合ったサービスを選ぶことで、より精度の高い遠隔読影を実現できるでしょう。
イリモトメディカルの遠隔読影では、30名以上の放射線診断専門医や各診療科の専門医が、一つひとつの症例に対して時間をかけて対応いたします。薬事承認済みの高精度AIを使用しながらがん検診の見落としを徹底的に予防することで、精度の高い読影が可能です。
遠隔読影を検討されている方は、お気軽にご相談ください。