Column コラム
2024.10.09
画像診断にAIを活用。最新読影サービスを徹底解説
AIによる技術は年々発展しており、医療現場でもAIを活用した画像診断が広まっています。画像診断AIは、医療画像の読影に携わる医師の補助として利用でき、近年さまざまな研究機関で開発が進んでいるシステムです。
この記事では画像診断AIの仕組みや精度、メリットとデメリットなどについて解説します。画像診断AIを活用しようか迷っている方や、画像診断AIの信頼性について気になる方は、ぜひ参考にしてみてください。
AIを活用した画像診断とは?
画像診断AI(画像診断支援AI)は、人工知能技術(AI)を用いて医療画像を読影し、病気や異常を検出するツールです。X線、CT、MRI、超音波などの画像診断装置で撮影した医療画像の読み解きなどをサポートすることによって、医師の読影業務を支援します。
画像診断AIは。事前に複数の医療画像データを学習することでパターンを認識し、異常を検出する能力を獲得します。数多くのパターンを取り込むことによって、人間の目では見逃しやすい微細な変化を検出できるのも利点です。
画像診断AIが主に活用されるのは、がんや神経、心臓、肺、骨折などの医療画像を読影する場面です。病変部位の早期発見だけでなく、画像診断報告書の作成において適切な治療計画の立案も可能であり、人間による判断の補助として使用することで患者の生存率向上にもつながります。
画像診断AIが広まっている背景
画像診断AIが広まっている理由として、全国の放射線診断専門医の不足や、医師による一つひとつの読影業務に時間がかかることが挙げられます。読影業務の量とそれに対応する人員が見合わないことにより、読影業務に携わる一人ひとりの医師の業務量が増えやすい傾向にあります。
放射線診断専門医の数が不足している
日本の放射線診断専門医の数は不足しており、今後も検査数に対して見合った人員が確保できないことが考えられます。2022年の日本放射線科専門医会・医会の報告では、放射線診断専門医が常駐する医療機関は、全体の20%以下と少ないです(2005年時点)。医師全体に占める放射線診断専門医の数も2%とわずかな割合になっています(2016年時点)。
一方、医療機関でおこなわれるCTの件数は、1990年〜2005年の15年間で5倍に増加していますが、放射線診断専門医の年間の増加率は5%未満です。これらの傾向から、今後も放射線診断専門医の育成が追いつかなくなる可能性があります。
読影業務の量が多い
医療画像の読影に携わる医師は、安全な医療の質を担保するために、時間をかけて丁寧に読影業務を遂行する必要があります。
読影業務は、適切な撮像方法を指示して、撮影された画像から所見を診断するだけではありません。他の検査結果や読影の結果を照らし合わせて、適切な診療に結びつけるような画像診断報告書を作成することも必要です。
画像から所見を診断するだけでも平均14.6分かかるため、1時間に質を担保した読影業務を4件以上おこなうことは難しいのです。
画像診断AIの精度
画像診断AIの精度は、条件によって異なりますが、放射線診断専門医の診断精度を上回るケースもあります。
近畿大学の研究では肝腫瘤の超音波画像に対して、約7万枚の肝腫瘤の画像パターンを学習させた画像診断AIと、専門医資格を持つ熟練医師の診断精度を比較しました。結果、画像診断AIは熟練医師よりも診断精度が高い結果となり、AIを活用した画像診断が発展する可能性が示されました。
一方で大阪公立大学の研究では、骨軟部領域の医療画像において、ChatGPTによるAIと放射線診断専門医、放射線科専攻医の診断精度を比較しました。結果として、ChatGPTの診断精度は放射線診断専門医には及ばず、放射線専攻医と同等であることがわかりました。
上述した内容も含め多くの研究結果から、画像診断AIの精度に関してはさまざま見解があります。事前にデータ数が多く得られるほど、診断精度が向上する可能性がある一方で、分野や条件によっては放射線診断専門医より精度が劣る可能性があることも事実です。画像診断AIを活用する際には、その性能を十分に理解する必要があるでしょう。
画像診断AIを利用するメリット
画像診断AIを利用するメリットは以下の3つです。
- 診断精度が向上する
- 作業効率が向上する
- 医療の地域格差が改善できる
それぞれ説明していきます。
診断精度が向上する
画像診断AIを使用することで、画像診断の精度が向上する可能性があります。分野や条件によって精度が異なりますが、医師が見落とす可能性がある発見が難しい病変も、画像診断AIで検出できるケースがあるのです。
事前に十分な学習が済んでいれば、発見が難しい転移したがんや、サイズの小さい初期のがんなどに対応できることもあります。また、放射線診断専門医とのダブルチェックで利用することで、診断精度をより高められます。
作業効率が向上する
医師の作業効率が向上するのも、画像診断AIによるメリットです。画像診断AIは、医師の読影や画像診断報告書の作成などの業務を効率的に補助して、作業効率の向上を図ります。
医師一人あたりの生産性が上がり、新たな時間で複雑な症例の診断などにも対応できるでしょう。結果として、医師の労働環境の改善につながることも期待されています。
医療の地域格差が改善できる
画像診断AIは地域による医療の格差を改善できる点も魅力です。特に放射線診断専門医が不足する地域では、非専門医がAIによる補助を受けることで、精度の高い画像診断を実施できます。地域によって異なる医療サービスの質を均一化することにつながるでしょう。
また、遠隔画像診断(※)と組み合わせることで、多くの患者がより高度な医療を受けられるようになり、さらに医療の地域格差の解消に貢献できます。離島や過疎地などでも都市部の放射線診断専門医にリアルタイムで検査データを送信し、AIが診断を補助することで、より信頼性の高い医療を提供できるのです。
(※)遠隔画像診断:医療機関で撮影されたCTやMRIなどの画像を、ネットワークによってほかの医療機関や専門の企業に送信し、遠隔で読影を依頼できるシステムのこと。
遠隔読影について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
>>遠隔読影とは?選ぶ上での注意点・料金など分かりやすく解説
画像診断AIを利用するデメリット
画像診断AIを利用するデメリットは以下の3つです。
- 人間の判断も必要になる
- 学習データの量で診断の精度が変わる
- 診断の根拠がわかりづらい
それぞれ見ていきましょう。
人間の判断も必要になる
AIを活用した画像診断は人間の判断なしで進めるものではありません。画像診断AIでの診断精度は、あくまで支援ツールとしての位置づけであるため、最終的な読影結果や治療方針の決定は医師による専門的な判断が不可欠になります。
医師はAIによって得た読影結果を過信せず、適切に解釈して活用することが重要です。特に、AIが見落とす可能性があるまれな症例や複雑な症例は、熟練医師の経験や直感に基づく判断が必要になることもあります。
また、AIは過剰に診断する傾向もあります。良性の所見を誤診した場合は、熟練した医師がAIの読影結果を正しく否定し、患者に無用な治療の提供を避けることが大切です。画像診断AIを活用するときは、AIと人間の医師が協力して診断することで、より信頼性の高い高度な医療サービスを提供できるのです。
学習データの量で診断の精度が変わる
すでに説明したように、画像診断AIの診断精度は、学習に使用されたデータの量や質に大きく依存します。特にまれな疾患や特殊な症例は、十分な学習データが得られないことがあり、実際の画像診断で精度が低下しやすいです。
AIの学習データに偏りがある場合も、特定の疾患に対して不適切な結果をだすことがあります。実際の画像診断で利用する前に、できる限り多くの学習データを準備して読み込ませておく必要があるでしょう。
診断の根拠がわかりづらい
画像診断AIは、事前に学習したデータに基づいて画像を読影しますが、読影結果に基づく具体的な根拠を表現することが難しいです。これをブラックボックスといい、AIは基本的に人間には理解しがたい思考のプロセスで答えを導きだします。
画像診断AIは結果に導く正確な理由が得られにくいため、医師が読影結果の妥当性を確かめる場面や、患者に病態を説明するときの補助には向きません。読影結果の根拠がわかりづらい点からも、医師による読影を併せておこなうことが不可欠だといえるでしょう。
責任の所在が不明確になる恐れがある
画像診断AIを利用する場合、責任の所在が明確にならない点もデメリットです。万が一AIによる誤診が発生した場合、責任の所在は不明確になる可能性が高まります。
今後、倫理的な問題や法的責任などについては、明確なガイドラインや法整備が必要です。画像診断AIを提供した医療機器メーカーの責任の有無や、将来的にAI診療が医師の診断能力に勝る可能性についても検討する必要があります。
画像診断AIの今後の課題
今後、画像診断AIの精度をさらに高めて普及していくためには、見合った学習データの確保や、ブラックボックス問題の解消が必要です。画像診断AIは、さまざまな臨床研究が進められており、今後さらなる発展が期待されています。
大量の学習データの確保が必要
今後、画像診断AIの精度を上げる課題として、大量の学習データを準備する必要性が挙げられます。質を担保した読影をするためには、数千〜数万件ほどのデータ数の確保や、それを読み込むスペックが不可欠です。
がんを診断させる場合には、「がんがある画像」と「がんがない画像」など、結果が対になる情報を疾患ごとに準備し、読み込ませる必要があります。学習に必要な莫大な量の画像を準備するためには、AI画像診断を取り扱っている企業だけでは難しい可能性があります。個人情報の配慮もふまえながら、企業と医療機関と患者が協力する必要性もでてくるでしょう。
根拠のある診断が可能になるか
ブラックボックス問題を解消して、根拠のある読影ができるようになることも、画像診断AIの重大な課題のひとつです。現状のAIは、読影結果をだすプロセスが不透明であり、人間に理解可能な説明ができません。画像診断AIによる誤診が発生したときに、原因の解明や責任判断を困難にさせる可能性が高いです。
近年、この問題に対処するため、さまざまなツールにおける説明可能AI(XAI:explainable artificial intelligence)の研究も進められています。2016年以降、説明可能AIに関する論文は増えており、画像からどの部分に注目して判断したかを説明する技術や、理由を自然言語で説明する技術などの開発が進んでいます。研究がさらに進めば、画像診断AIの信頼性や安全性がより高まるでしょう。
まとめ
この記事では、画像診断AIの概要や、現在の研究で明らかになっている精度の高さや今後の課題などを詳しく解説しました。
AIを用いて画像を読影する画像診断AIは、放射線診断専門医の不足や増加する読影業務に対応するため、医療現場での活用が広がっています。画像診断AIの精度は、医師よりも上回るケースもありますが、条件によって大きく異なります。事前に学習するデータの量や質によって精度が変わる可能性があるため、AIの性能を十分に理解しておくことや、人間の判断と併せて活用することは不可欠です。
また、画像診断AIは読影のプロセスがわかりにくい点が問題として挙げられており、技術の開発に向けてさまざまな研究が進められています。今後も画像診断AIに関する研究が進み、臨床で利用される場面が増えることで、信頼性や安全性の高い医療を提供できるでしょう。
イリモトメディカルの読影サービスでは、厚生労働大臣の薬事承認を得た「AI支援胸部がん検診読影システム」によって、専門医とAIの二重読影をおこなっています。遠隔読影では、経験豊富の放射線診断専門医や30人以上の専門医師が対応し、がん検診の見落としを徹底的に予防します。画像診断AIの活用を検討されている方は、ぜひお気軽にご相談ください。