Column コラム
2019.04.15
専門医制度が日本の放射線医学を崩壊させる
横浜で開催されていたJRCから帰ってきました。ちなみにJRCとは放射線科医の学術団体の日本医学放射線学会JRSと放射線技師の学術団体の日本放射線技術学会JSRT、放射線機器を作り・販売する事業者団体の日本画像システム工業会JIRAの3団体が作る団体でその年次大会も総称してJRCといわれており、毎年4月に横浜で開催され、毎年2万人以上の参加者がある日本最大の放射線医療のイベントです。
さて、私自身で言えば、本当に充実した3日間でした。
JRC企画のAIのハンズオンセミナーに参加したり、充実した合同シンポを聞いたりしました。また、土曜日の午後は我が社の社員教育を兼ねて、機器工業会が行う国際医用画像展ITEM ツアーを行い、各社さんから最新の放射線機器・技術を説明していただきました。
新しい出会いがあり、イリモトメディカルの新しい方向性にも明かりが灯りました。「本当に充実した、楽しい3日間でした。」
と言いたいところですが、これからがこの投稿の本論です。
問題はSNSにも多くの放射線科医の皆さんが投稿していただいている、日医放の学術大会が機構専門医移行の単位とりの場になってしまっていることです。
「科学的な意見交換の場がなくなってしまった」とか「教育講演が本来の教育の場ではなく、時間つぶしの時間になってしまった」などの意見が多く上がっています。
まったくそのとうりです。
私はJRCの視点から見てもう一つの懸念を述べたいと思います。
一つはせっかく、医師の放射線学会と技術学会が共同企画してシンポなどをやっているのに、参加者のモチベーションが異なり、単位とりの日医放参加者で会場があふれて、技術学会参加者が落ち着いて参加できない会場があったことです。
終了前に出口前に並び、講演の結びをざわつかせる日医放参加者は技術学会参加者の目にはどう映ったのでしょうか?とても心配です。
合同企画は医師と技師の素晴らしい研究者がコラボしてその結果を披露しあうJRCならではの企画てす。技師学会がわから「うちの会員が落ち着いて勉強できないあんな状況なら合同企画はやめたい」と言われないか心配です。
もっと心配なのは画像システム工業会の主催する展示会ITEM の参加者に専門医単位取得が影響していないかどうかです。
JRSの学会が行われている横浜パシフィコ会議センターとITEM の会場の展示ホールは橋で結ばれていますか、単位とりの講演参加で時間がなく、ITEM に行けなかったと言う参加者が少なくありませんでした。
JRCの開催経費の多くはITEM の出展料で賄われています。JRS.JSRTの会長は資金集めの苦労はなく、参加者の参加費も抑えられています。おそらく、このシステムがなければ参加費は3万円以上になるはずです。
ITEM は放射線医療機器を製造販売する企業にとっては広告のチャンスであり、その経費は広告宣伝費です。ITEM は毎年入り口で入場者を参加者バッチでバーコードチェックをしています。もし、それで昨年・今年の放射線科医の参加が減少しているようなら、機構専門医単位制度が影響している可能性があります。
(実は逆で単位があるため学会に参加する放射線科医が増えて、ITEM 参加者が増えている可能性もありかますが、、)
もし、減っているなら広告宣伝費の費用対効果がわるく、JIRAからなんとかしてくれ、またはJRCから撤退という意見も出ると思います。
ここからは、もっと深刻な話です。
私のボスの片山仁先生はJRCの前身のJMCPを作り、現在のかたちの1993年の総会の会長を務め、さらに1995年のアジアオセアニア放射線学会を神戸で開催し、私も微力ながら協力いたしました。この頃、北米放射線学会RSNAが学術的にも商業的にも最高のイベントと言われていましたが、ヨーロッパ団体ESRが力を伸ばし、開催をウイーンに固定して発展し始めました。私たちはこれをアメリカ、ヨーロッパ、アジアオセアニアの3つに分けて、日本が主導になるという活動をしましたが、力及ばす現実は現状のとおりです。
この構想が実現していたら、アジア・オセアニアを中心とした放射線医療関係者が4月に横浜に集い、意見を戦わせる場になっていたはずです。
そうなっていたら、学会を国内の単位あさりの場にはできなかったはずです。JRSの国際化を進めるため、発表は英語でという構想も中途半端なままで、学術発表の会場が、単位にならないため、閑古鳥が鳴いている状態です。
このままでは、日本の放射線医学はもっともっとガラパゴスになってしまいます。大変心配です。
現在、専門医機構そのものが認定事業やその組織体制に問題が噴出しており、また”一度、立ち止まって”議論が出てきています。日医放も機構の更新については”一度、立ち止まって”考える必要があると考えています。
最後にJRCて素晴らしい講演をしていただいた、放射線科医および放射線技師の先生方に改めて感謝です。